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「文字禍」 中島敦


文字禍文字禍
(2012/09/27)
中島 敦

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古代アッシリアの学者が王の命令で「文字の霊」を研究する。
書物(瓦・粘土板に掘られたもの)が積まれた図書館で研究に没頭するが、ある時一つの文字を凝視しているうち不可思議な事が起こる。
「一つの文字を長く見つめている中に、いつしかその文字が解体して、意味の無い一つ一つの線の交錯としか見えなくなってくる。単なる線の集まりが、なぜそういう音とそういう意味とを持つ事が出来るのか、どうしても解らなくなってくる。」
「単なるバラバラの線に、一定の音と一定の意味を持たせるものは何か?」
その後ろには何者かの存在が在るに違いないと、この体験によって博士は「文字の霊の存在を認め」るに至る。

この体験とはつまり文字のゲシュタルト崩壊
殆どの人が経験したことがあるだろう、あの不思議な感覚。

自分の経験で言えば、小学生の時にこの感覚は一体何?自分もしかしてアホになったんだろか、他の誰もこんな事思ってないよなあ、と密かに思っていた。
百字漢字帳は文字悪魔の巣窟であった
「龍」なんて字は悪魔の字。百字どころか二行目三行目で崩壊してしまう。
200字分書けと言われて3行目で崩壊しているのに、その後どうしろと言うんだ。
人に拠って崩壊に至るレベルの違いはあるようだが、私は特に地名に弱い。
なぜか各務原(かがみはら)、岐阜(ぎふ)、クアラルンプール、などに弱く書かなくても口に出すだけで崩壊しかけてしまう。
我ながら耐性が弱すぎる

本書に戻って。
「獅子と言う字は、本物の獅子の影ではないのか。それで獅子という字を覚えた猟師は本物の獅子の代わりに獅子の影を狙い、女と言う字を覚えた男は、本物の女の代わりに女の影を抱くようになるのではないか。」
「(文字を持つ以前は)歓びも智慧もみんな直接に人間の中に入ってきた。今は文字の薄被をかぶった歓びの影と智慧の影としか、我々は知らない。」

これはつまりいわゆる記号論というものの事でしょうか。
シニフィアン、シニフィエという言葉があったなあ。

人間は言葉というものに規定され支配される。
プリンですよ召し上がれ、と言われて食べてみたら玉子豆腐だった時の衝撃。(そんな経験は無いが)

博士の所に若い歴史家がやってきて問う「歴史とは昔在った事柄をいうのであろうか?それとも粘土板の文字をいうのであろうか?」
博士は答える。「書き漏らし?冗談ではない。書かれなかった事は、無かったことじゃ。歴史とはな、この粘土板のことじゃ。
「文字の精どもが一度ある事柄を捉えて、これを己の姿で現すとなると、その事柄はもはや不滅の生命を得るのじゃ。」

怖いですねえ。嘘も百回言えば(書けば)本当になる、なんてどこかの国みたいですねえ。

そして博士はとうとう文字以外の日常でもゲシュタルト崩壊を起こし始め、文字の霊への崇拝を止めよ、と説くが王の機嫌を損ねる。それもまた文字の霊の博士への復讐なのであった・・・



SDから 239
ぼく人間の「ごはん」という言葉だけは知ってるで




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